13トリソミーについて
人間の体は、父親と母親からもらった遺伝子情報を基に作られます。遺伝子情報は、染色体という乗り物に乗っています。
一般の細胞の核には、1番から22番までの一対の常染色体が44本、それにXまたはYの性染色体の2本が加わって、
合計46本の染色体がセットになって存在します。半数の23本づつをそれぞれの両親から継承しています。
←注:イメージとしてダウン症候群(21トリソミー)における染色体不分離のアニメーションをお借りしました。長い染色体はその他の染色体の場合を表し、小さい染色体が問題となる染色体を表します。
多々のケースのうちの一例で、あくまでもイメージです。これは卵子の例ですが、不分離は両親のどちら側でも起こる可能性があります。
(c) Hitonao NUMABE, M.D., Ph.D. Kyoto University
遺伝子情報が載っている「染色体」という乗り物に、何らかのトラブルが起こることがあります。顕微鏡で認められるほどの異常があると、染色体に異常があると言います。13トリソミーの場合は、13番染色体が3本あるので、常染色体は45本になり、それにXまたはYの性染色体が2本存在することで、合計47本の染色体がセットになり、細胞の核に存在することになります。
染色体はサイズが大きいものから番号が付けられており、大きい方から13番目の常染色体が、1本多く3本あるので「13トリソミー(トリ=3、ソミー=染色体)」と言われます。
K.PATAU博士らのグループにより、1960年に初めて確認されたため、PATAU(ペイトウ、パトー)症候群とも言います。
約80%が標準型トリソミー(染色体が3本独立している)で、約15%〜19%が転座型(多い1本が他の染色体についている。そのため、細胞核内の染色体の総数は46本。
14番又は13番についていることが多い)、約5%〜1%がモザイク型(正常細胞とトリソミーの細胞が混在している。その割合や症状により、生命予後・成長発達に恵まれる場合もある)です。一部の転座型を除き、そのほとんどは細胞分裂時に起こる突然の事象だと考えられており、遺伝的な背景は否定されています。
その他、13番染色体全体ではなく、その一部分だけを過剰に持つ、部分トリソミーがあります。過剰な部分のサイズや乗っている遺伝子の種類が異なれば、それぞれの臨床所見も異なります。
13トリソミーの出生頻度は、約5000人に1人といわれています(21トリソミー=ダウン症候群は約1000人に1人、18トリソミー=エドワード症候群は約4000人に1人)。
生後1か月以内に約半数、1年以内に90%以上が亡くなるとのデータもあります。平均寿命は3〜4ヶ月。妊娠初期の自然流産の2.6%が13トリソミーであるとの報告もあります。
最高齢は、日本では19歳(『臨床遺伝医学U』1992年刊、他)ですが、当会が確認している最高齢は20歳後半で更新し続けており、欧米では30歳代の報告があります。
誕生後の予後(見通し)は一般的に悪く、状態によっては、誕生直後から、医療的知識や情報もないままに、医療的決断を求められることも少なくありません。
著明な全身の発育不全で生まれ、その後の発育、発達も極めてゆっくりしています。筋肉の緊張度は、緊張低下が多く、まれに過度の緊張が観察されます。
揺り椅子状の足など、様々な特徴があります。
最近では、症状が安定している場合は、口唇裂、多指、ヘルニア等の手術に踏み切る事例もあります。
自宅での療育には、医療的、社会的、精神的な様々な支援を早期より必要とします。
臨床状態および合併症
【頭部】
全前脳症・無嗅脳・脳梁欠損・大脳低形成・小脳奇形・水頭症などの脳内奇形、小頭、前額部傾斜、頭蓋縫合離開、頭皮欠損、
小眼・無眼・単眼・虹彩欠損などの眼球形成不全、白内障、眼間開離または近接、鼻骨低形成、耳介変形・低位、外耳孔閉鎖、口唇口蓋裂・気管軟化症
【体幹】
心室中隔欠損(VSD)・動脈管開存症(PDA)・心房中隔欠損(ASD)・ファロー四徴・右胸心・大血管転位・弁異常 ・卵円孔開存などの心奇形、
臍帯・鼠径・横隔膜ヘルニア、短頸、毛細血管腫、項部過剰皮膚、肺分葉異常、嚢胞腎、重複腎、副脾、水腎症、腸回転異常、単一臍動脈、骨盤低形成、お尻の割れ目の上の窪み、
双角子宮、重複膣、停留睾丸、陰嚢異常、重複尿管、小陰茎、側湾症
【四肢】
多指趾、屈指、揺り椅子状足底、合指、尖った踵、皮膚紋理異常
【その他】
神経系の異常、痙攣、てんかん、無呼吸発作、低筋緊張、筋緊張亢進、白血球核小突起増多、胎児性ヘモグロビンの産生の高度存続、難聴、哺乳困難、胃食道逆流
観察される所見はそれぞれの子供により異なり、この中のいくつかだけです。